今年も音大音高受験シーズンが本格的にスタートしました。3年生の弟子がいるので、昨年に引き続き気合いを入れて取り組んでいる今日この頃です。

いまは音楽を志す学生も減っているし、私の母校なんて今や就職に力を入れているらしく大半が新卒で一般企業に就職しているとか。それだけ演奏家・音楽家として生きていくことが厳しい時代になったということだと思います。思い起こしてみると、コロナになってからというものフリーランスの20代がかなり減った印象があります。そんな世の中で音楽を学び将来の職業にしたいと思う中高生たちに、私は何を伝えられるだろうか?自問自答を重ねながら、レッスンに挑んでいます。

自分自身の受験期は目の前のことに必死すぎて大きく捉えることが出来ていなかったのですが、受験はほんのちいさな通過点に過ぎません。合格することが大事なのではなく、そこまで自身がどう向き合って乗り越えてきたかどうか、そしてその経験を入学後にどう活かしていくかどうかが大事なのだと思います。というのも、これはいまに始まったことではありませんが、楽器が上手に吹ける「だけ」で生きていくのは大変厳しいからです。十数年この仕事をさせて頂く中で本当にたくさんのオーボエ奏者さんを見てきましたが、極端な話ですが演奏はとても上手であってもそれ以外のことが難しいと、どうやってもいずれ消えていきます。「もっとコミュニケーションができたら」「お話が上手だったら」「ほかにスキルがあったら」ひとつでもプラスアルファがあれば、今もオーボエ奏者として活動を続けられたかもしれない、もったいない事例が非常に多いと考えています。たとえこの厳しい世の中でも、演奏以外にもできること(可能なら特技といえるレベルで)を持つことが出来れば、簡単に自己実現が叶うと私は思っています。

音楽を志す学生の多くは、「私にはオーボエしかない!これしかできない!」と思い込んでいます。ひとつのことに賭ける若さがまぶしいと感じつつも、実はそんなことはない。ほかにもできることが実はその影に山ほど隠れています。私の半分くらいの年齢のうら若きオーボエ奏者たちには、もっとたくさんの才能と可能性に溢れています。

無限にある可能性の芽を見つけ、育てるお手伝いをしていきたいなぁと思い、心を燃やす毎日です。