大人の生徒さま(特に上級者)からよく寄せられるお悩みに多いのが、言葉で説明して理解することが難しいことを、どうやったら理解できるのか・定着させられるのかということ。初級〜中級段階の内容のほとんどは言語化できるので、「フィーリング」が理解できなくても大丈夫です。ところが上級者になってくると「響きを豊かに」「もっと鳴らして」「音色を明るく・暗く」といった抽象的な表現がどうしても増えてしまうので、理解出来ず苦しむ方が増えていきます。大人になって楽器を始めると頭で考えて上達していくことが多いので、このあたりで行き詰まってしまいます。そして講師側も、狭い防音室の空間だけでレクチャーできる範疇を超えてくるので、レッスンの難易度が上がっていくところでもあります。
分かりやすいようにタイトルは「響き」「鳴り」といったキーワードを挙げましたが、記事の中でそれに触れることが本意ではなく、今回は「言葉では説明・理解の難しいものを会得する方法」についてお伝えしていきたいと思います。
明確な答えは誰も知らない
まず前提として、当たり前ではありますが気がつくと忘れがちなこととして、自分の出している本来の音を聴くことは一生できないのです。どんなに上手な人でも初心者でも全員同じ条件のもと、演奏をしています。絶対的な正解を感じ得ることは「できないもの」だということを念頭におくだけでも、変わってくるのではないでしょうか。
人の演奏を聴いて、「感じる」「まねをする」
自分の音を正しく聴けないという前提を考えると、やっぱり様々なオーボエ吹きの演奏をたくさん聴くことが大事だと思います。素敵な演奏をする方はいったいどんな姿勢・呼吸をしているのか?逆にアマチュアさんの演奏を聴いて、どうしてうまくいかないのか?考えてみるのも良いと思います。良いこともそうでないことも感じ取って、そこから自分で実践できることを真似してみる。そうした自分の演奏を今度は誰かに聴いてもらったり録音をしたりしてフィードバックを取る。その繰り返しで「多分これかな」と思えるものが見えてくるのだと思います。このワークのコツは、学問のように頭でっかちで考えすぎないで、右脳優位に芸術的な視点で切り込んでみることだと思います。
このような問題は「センス」の領域でもあります。つまりここでやりたいことって「センスを磨く」ということなので、音楽に限らず色々な芸術に触れる事も良いと思います。
音楽には決まった正解がありません。しかし、それぞれ演奏者の心の中には「こうしたい」と思う正解があります。レッスンでは、生徒さまが求めている「正解」をなるべく正しく汲み取って、一緒に答えを見つけていけたらと思います。

