夏のボーナスの季節がやってきて、楽器購入に踏み切る方が多い時期になりました。楽器購入をされる際は、まずご予算からある程度絞っていくようにするのが基本ですが、ご予算で枠組みを作らずに自分に合う1本を見つけることを優先したい!と思う方もいらっしゃるかもしれませんね。今日はそんな方の指針になりうる記事を書いていきたいと思います。
選考基準①手の大きさ
女性で小柄な方だと、リングキィが届きづらくて辛い、という方がいらっしゃいます。リングキィにゴムで蓋をして使う手段もありますが、大人になると手が成長することもないですし、歳を重ねると柔軟性も失われ、より一層無理が効かなくなりますので、無理せずキィを押さえられるものを選んでいきましょう。リグータやマリゴ2001は人間工学に基づいて設計されたキィなので、押さえやすいし、スチューデントモデルはカバードキィなので安心です。
こういった問題がない方は基準①はスルーされてください。
選考基準②買い換える前提か、ずっと使うか
これは非常に大きな分岐点ですので、それぞれ深く触れていきます。
オーボエに慣れるまで使う楽器が欲しい人(目安3年以内の買い替え)
続くかどうかを見る、いわば「トライアル期間」のための楽器を購入される方。例えば当教室で一番グレードが下の楽器レンタルであれば、2年間借り続けた総額は18万円ほどになりますので、それよりも安く済むかどうかがひとつ基準になってきそうに思いますが、20万円を切る中古楽器というのは、状態が悪い・古いことが多く、購入後に大きな修理が必要となってくる場合もありますし、キィも初心者が演奏するにも不十分なことも多く、しっかりと選ぶ必要があります。それなら、(レンタル期間にもよりますが)レンタル総額よりやや割高にはなってしまいますが、相場20〜30万円程度の良い状態の中古を入手して、慣れてきたところでメルカリなどで個人間で販売してしまえば、レンタル総額よりは自己負担総額がお安くなると思います。いずれ手放す予定がある場合には売れやすいメーカーとして、中高生に根強い人気のヤマハ/431ないし421(もちろん831や821といった上級機種)が最もリスクが低いと思います。楽器としての癖も少なく、中古でも扱いやすいので、おすすめです。海外メーカーの初級・中級機種たちも、値上がりしているのでこの先人気が出るのではないかと予想します。
上手くなったら買い替えたい!と漠然と考えている人(目安5〜10年以内の買い替え)
前述よりもこちらのケースが多いと思います。今すぐには考えていなくても、いずれは・・・とぼんやり頭の中にあるような方、多いのではないでしょうか。買い替えないかもしれない、けど、一生使えるほどの上級機種まではちょっと・・・というケースですね。買い替えをしない可能性もあるし、ある程度の年数を使っていくとなると、中級機種以上のグレードがおすすめです。また、選ぶのはある程度演奏できるようになってからが良いので、初心者の方であればレンタルをしばらく利用して練習をしましょう。買い換えようと思うタイミングがいつ来ても良いよう、なるべく長く使えるように、あまり使われていない中古もしくは新品がおすすめです。
一生に一度の購入にしたい人
高価なお買い物になるので、一度買った楽器を一生使いたい!と思う方も多いはず。講師としても、できればずっと共にして欲しいと思いながら選定しております。一生に一度の購入が10代・20代なのか、50代・60代なのかにもよってくるのですが、基本的には上級クラスのしっかりとした造りのもので、新品をおすすめします。長期的なことを考えると第一にボディの木の質がとても大事ですが、ロレー製品は長期間しっかりと寝かせてからオーボエとなっているので、おすすめです。(ただしキィ部分の銀メッキの銀の純度が高く、黒くなりやすいので注意)リグータも数年前からクランポンに買収されましたが、それによって仕上げがよりていねいになった印象で、より長期使用に適してきたように感じます。マリゴ/M2は、楽器の鳴りが悪くなってきたところでトップジョイントさえ買い換えれば生まれ変わったようにフレッシュになるので、長期使用には大変良いです。901であれば上管がコンポジットとなっている901Cは全部木製のものと比べると耐用年数がかなり長いそうですが、お好みが分かれます。
あと、個人的に思うようになったのは、その楽器を作る会社の将来性を見ることも重要ではないかと考えます。かつてあったメーカー(ハンスクロイル、ラリリー、ソノーラなど)は中古市場ではいまだによく見かけるものの、純正のパーツはもう手に入らないでしょうし、メンテナンスにも問題が出てくるように感じます。後継者がおらず製造者がすでにご高齢なメーカーは、お若い方にあまりおすすめすることはできないな、と思うようになりました。誰の目にも触れる記事上では具体名はあげられないのですが(汗)
近年ではグラナディラでない素材の木(モパーネやココボロなど)の楽器も出てきましたが、グラナディラ以上に歪みが生じやすく割れやすいという点からも、日本の激しい気候変化に対応し長期的な使用に耐えうるかは怪しいので、今のところは避けた方が無難でしょう。先々技術が発展したらもしかしたら変わるかもしれませんので、今後には期待していたりします。
解説が長くなりそうですので、続きはまた来週更新したいと思います♪